- ジャック・オー・ランタン(マジなやつ。)
ここは、ヨーロッパのはじっこにある、小さな島国。
アイルランドのある村にジャックという男がいました。
ジャックは乱暴者で人をだましては、お金をまきあげ、毎日お酒ばかり飲んでいました。
村の居酒屋。
いつものように、お酒を飲んでいると、1人の男が、近寄ってきました。
ジャック:なんだおまえ?
この酒はおれのだ!
やらんぞ!!
ジャックはそう言って、男につかみかかりました。
すると、男は言いました。
男:・・ふふ。
そんなものはいらん。
ジャック:・・ああ?
男:おれが欲しいのはおまえの魂だよ。
ジャック:なんだぁ?
ジャックがそういうと、次の瞬間そこに男の姿はなく、1匹の悪魔が立っていました。
悪魔:おれは地獄から来た。
おまえ・・今日が何の日か知らないのか?
今日は、あの世とこの世の境が消える日。
ジャックは驚きのあまり、座っていた椅子から床に落ちてしまいました。
悪魔:おれたちは、この日お前のような、汚れた魂をいただきに来るんだよ。
ジャック:おまえは、おれの魂を奪いに来たってことか!?
悪魔:つまり、そういうことだ。
それを聞いたジャックは、一気に酔いがさめ、顔が真っ青になりました。
そして、悪魔にこう言いました。
ジャック:わ、わかった。
・・・お前から逃れることはできんらしい。
じゃ、じゃあ、こうしよう。
おれの魂はお前にやる。
そのかわり、おれのこの世で最後の頼みを聞いてくれ。
悪魔は、ジャックのあわてた様子があまりにも面白いので、その頼みを聞いてあげることにしました。
悪魔:なんだ?言ってみろ。
ジャック:おれは、最後に思いっきり遊びたい。
だから、おれに遊んで暮らせるだけの金と、時間をくれ。
悪魔:最後の頼みごとが、遊ぶための金と時間か・・・。
つまらんモノを欲しがるんだな・・。
まあいいだろう。
では、10年やる。
その間は、お前の財布の銀貨が尽きないように魔法をかけておいてやる。
10年後、おれは、必ずお前の魂をいただきに来るからな。
そう言って悪魔はさっさと飛び立っていきました。
ジャック:(・・・はぁ。危うく魂をとられるとこだった・・。)
しかし・・。
この銀貨は、儲けもんだ。
今日から、一生遊んで暮らせるぞ!!
ジャックは、その日からまた、毎日悪いことをしては遊び、人々を困らせていました。
そして、10年たち・・。
ジャックの前に再びあの悪魔が現れました。
悪魔:ふふふ。
相当楽しんだようだな・・。
約束の日だ。
お前の魂はずいぶん汚れたようだ。
ジャック:ああ、お前さんのおかげで、楽しい日々を送れたよ・・。
悪魔:では、さっそくお前の魂を・
ジャック:まてまて・・。
おれは最後の最後にもう1つ頼みを聞いてほしい。
悪魔:おまえ・・・あれだけ悪事をはたらいて、まだこのおれに頼み事か・・。
ずうずうしいやつだ、まったく。
ジャック:まあ聞け。
おれは十分すぎるほど楽しませてもらった。
だから、最後にリンゴを食いたい。
悪魔:・・・?
リンゴ?
ジャック:そうだ。
あそこの木になっているあのリンゴだ。
あれをおれにとって来てくれないか?
そのリンゴをとってきてくれたら今度こそおれの魂をやる。
取り引きだ!
悪魔:取り引きか・・。
フン・・。
まあいいだろう。
それを食ったら今度こそ、その魂をいただくからな。
そういうと、悪魔はリンゴをとるために、木に登りました。
そして、リンゴをつかむと、また木の下におり始めました。
と、下を見た悪魔の顔はどんどんこわばっていきました。
ジャックが、十字架を手身持ち悪魔の方を見ていました。
悪魔は、ジャックの手にある十字架が怖くて降りられません。
ジャック:いいか、よく聞けよ。
そこから下りてきたければ、おれの魂を今後一切取らないと約束しろ!!
悪魔:おれには、羽がある。
そんなものは、通用しない!!
ジャック:おまえは、おれにリンゴをとってくると言った。
おまえは、おれにリンゴをよこすまでは、帰れないんだよ!
おまえは、さっき取り引きをした。
「おれがリンゴをとってくるかわりに、おれの魂をやる」。
おまえたち、死霊の世界では言葉の呪縛は絶対だろ。
悪魔:・・・っく。
ジャック:さあ、そのリンゴを持ってくるんだ。
仕方なく悪魔は、ジャックの要求をのむことにしました。
悪魔:今後一切、おれはお前の魂は取らない!
いいな、よく覚えておけよ!!
そう言い残して、悪魔は魔界へと帰って行きました。
そうして、ジャックは再び、人をだましては、金品をまきあげるという生活を送りました。
月日が流れ、ついに、ジャックにも死がやってきました。
生きている間、人々を困らせてばかりいたジャックは、だれにも悲しまれることなくあの世へと旅立つことになったのです。
そして、天国へやってきたジャックは、天国の門をたたきました。
しかし、生きているあいだ中悪いことばかりしていたので、天国には入れてもらうことができませんでした。
そこで、地獄に入れてもらおうと、地獄の門の前までやってきました。
すると、そこには、以前ジャックの魂を取りに来たあの悪魔が、立っていました。
ジャック:よう、久しぶりだな。
悪魔:おまえ・・。
ジャック:おれをその門の向こう側に入れてくれ・・。
悪魔:・・・・・。
あきれたやつだな。
だめだ・・。
ジャック:なぜだ?
おれはこの世で悪事の限りを尽くしたんだ。
天国には行けんだろうが・・。
悪魔:おまえ・・。
忘れたのか・・?
おれは、あの時おまえに約束させられたんだ。
おまえはおれをリンゴの木の上に追いやり、そこで、こう言った。
「おれを開放する代わりに、お前の魂は今後一切取らない」
という取り引きを交わしたんだ。
ジャック:・・・!?
悪魔:だからおまえをこの門の向こう側に通すわけにはいかないんだよ。
そう言って、悪魔はジャックを追い返しました。
結局ジャックは自分の悪知恵がもとで、天国にも地獄にも入ることが出来ずにいました。、
そして、フラフラと元来た道をもどりました。
辺りは暗く、風はびゅーびゅージャックの顔に吹き付けます。
疲れ果てたジャックは顔をあげました。
すると、目の前には、あの悪魔が立っています。
そして、ニヤニヤしながら言いました。
悪魔:おまえにこれをやる。
足元が暗くては、歩きづらいだろう。
ふふふ・・・・・。
そういうと、ジャックに火の入ったランタンを渡しそのまま消えてしまいました。
ジャックは悪魔からもらったランタンを手に当てもなく、あの世とこの世の境目をさまよい続けました。
そして、10月31日ハロウィンの夜になると、死者や、悪魔たちとともに、この世に降りて来るようになったということです。
脚色:テン子・うっしー
絵:イヌ
編:テン子
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